ゆづの投資ブログ

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企業分析と小型グロース株投資について

【企業分析】ビジョナリーHD(3995)

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事業の概要等

旧社名は「メガネスーパー」。名前からもわかる通り、関東圏の方なら誰もが知っている眼鏡小売チェーン店です。全国に389店舗(2019年5月)展開し、そのうち5割が関東圏での出店。昔は眼鏡チェーン御三家とも呼ばれていたようですが、近年は「Zoff」「JINZ」等の新興企業にシェアを奪われ、価格競争に陥った結果、8年連続赤字を記録しました。これらの企業はSPA(製造小売)といった組織業態を取り、徹底的にコストを低減し、「安く、ファッション性のある眼鏡」を販売しているため、価格で勝負して勝てるはずもなかったのです。(SPAは、単一の企業が、商品の企画から製造・販売までを一貫して行う戦略のことで、ニトリファーストリテイリングがこの戦略で大きく成長しています。)

これまで、私の周囲でメガネスーパーの眼鏡を使用しているという話は、全く聞いたことがありません。実際その通りで、「顧客の7割は45歳以上」と偏りが激しいようです。しかし、その偏りをむしろ武器にして、眼の健康に不安や悩みを抱えるシニアをターゲットに、アイケサービスを提供する「次世代型店舗」へと急速に移行している最中です。 

ビジョナリーの展望・強み

・付加価値の拡大

既存の眼鏡を売るだけの店舗から、アイケアサービスを提供する次世代型店舗に移行することにより、付加価値の拡大が見込めます。移行後の主要KPIを確認すると、「客数」「新規客数」「販売単価」いずれも小売業とは思えないような上昇率です。メディアに取り上げられた影響もあってか、2019年4月期に入ってからその傾向は顕著で、世間に「アイケアサービス」が認知されてきれいる証拠だと思います。

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また、今期は一気に32店舗「次世代型店舗」への移行を一気に進めましたが、これでもなお移行率は9.3%となっています。つまり、残りの353舗が、上記KPIのような「売上高上昇」の可能性を秘めています。加えて1店舗当たりの売上が伸びることで、販売管理費率は小さくなるので、店舗の移行が進むことに伴う営業利益率の改善も期待されます。

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 ・出店基準の改善

新規出店に関する基準を大きく変更しています。新基準では、設備投資費を抑え、投資回収期間が1/2と短くなっています。星崎尚彦社長就任後、設備投資費のような省けるコストの削減に意欲的であり、販売管理費率が低減に寄与していると考えられます。また、周囲の競合店や商圏特性を分析し、より正確にシェアを算出することで、将来の収益を試算するようになったようです。今まで感覚に頼って収益試算していたというのも中々ですが…、その分、営業利益率の向上という面で伸びしろも感じられます。今後は、より確度の高い分析を基に出店を行うため、継続的な出店による増収増益も期待できそうです。

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株価が低迷している理由

2019年5月16日時点で、ビジョナリーの株価は52円まで下落しています。昨年の年初高から実に「1/4」!この株価低迷の理由としては、以下3点と考えています。

 筆頭株主による株式売却

2018年8月、筆頭株主であるアドバンテッジパートナーズから1億を超える株式の売却が発表され、需給バランスが一時的に悪くなりました。

 ②決算の進捗率が良くない

前回の3Q決算の時点で、経常利益の進捗率は52.4%です。特に目新しい材料も出ていないため、去年暴騰した反動と合わさって、3Q決算時には再上場した際の株価まで下落しています。

 ③月次IRの数字が悪化

5月初旬から、更なる下落を招いたのが「月次売上状況」のIRです。通期平均では、「前年度比118%」売上が伸びているにも関わらず、2019年4月には「前年同月比100%」という数字を発表しました。このIRと相場の悪さが相まって、ビジョナリーの株価にとどめの一発を刺したようです。

購入を決断した理由

「株価が低迷している理由」を記載しましたが、「決算進捗率」「月次IR」の数字に対して、市場が悲観的になって売られすぎていると思っています。いくつかの理由から、それらの数字が見た目ほど問題無いと考え、購入に至りました。

 ・決算の進捗率について

3Q決算時点の進捗率は確かに悪いですが、以下の理由から、4Q決算である程度巻き返せると考えています。

①2Q決算は、会社予想より上回って着地していること。この点で、今期予想が高すぎる目標ではないと推測しています。

②3Q決算は、閑散期で毎年営業利益が低いこと。例年通り、通期の中では1番利益が少ないですが、去年より確実に増益していることがわかります。過去2年間を確認すると、4Qで最も高い営業利益を出している傾向があり、今期も例外ではないでしょう。3Q決算説明会では、通期でEBITA15憶を超えるだろうと星崎社長が話しており、4Qで営業利益9億ぐらいは乗せられるのではないかと考えています。

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 ・月次IRの数字について

4月の月次IRで全社売上が「前年同月比100%」と発表され、株価52円まで下落しました。確かに店舗数が増えているので、実質マイナス成長です。しかし、市場が捉えているほど絶望的な数字ではないように思います。その根拠は、月次IRを2年分遡ると確認できます。過去2年間における4月の売上高伸び率は、以下となっています。

2017年4月「119.7%」 通期平均「112.4%」

2018年4月「127.5%」 通期平均「116.1%」

実は過去2年連続で、通期平均を大きく上回って売上高を伸ばしています。もう少し分かりやすくするため、Excelで表を作ってみました。この表は、3年前の売上高と比較して、売上高が何%伸びたかを示しています。4月の全社売上は、3年前を基準として「152.6%」伸びており、他の月と比較しても平均的な水準であることがわかります。つまり、昨年と一昨年が強く伸びた反動で、見た目の数字が悪く見えると考えられます。

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とは言えど、今後も月次IRの数字は注意して追うべきでしょう。「アイケアサービス」という世の中のニーズを捉えたビジネスに見えても、今後うまく浸透せずコケる可能性もあります。IRを逐一確認し、その都度適切な判断を下せるようになりたいですね。